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編集ノート

190年前の仕掛けが、自分で印刷されるようになった

2026年11月2日Ren Arakawa

『Ballet #01』は、止まっている間はなんの変哲もない。電気釜ほどの大きさのドラムの縁に、細い樹脂の支柱が十二の角度で並び、ダンサーの四肢がそれぞれの瞬間で固まっている——事情を知らなければ、梱包用の緩衝材か、壊れた傘の骨組みと見間違えそうな代物だ。人の身体を思わせる要素はどこにもない。

後藤映則は、わざとそう印刷した。ドラム自身のリズムに合わせたストロボの下で回してみると、支柱の群れが一人のダンサーへと解け、途切れることのない一回転を踊り始める。1834年に彩色された紙の玩具がやっていた仕掛けを、二十年前には存在しなかった機械でミリ単位まで作り込んだものだ。材料は変わった。その奥にあるアイデアは、頑固に変わらなかった。

これを見ていると、神田駅の発車案内板のことや、その外にある、ボタン同士の隙間だけでブランド名を綴る自動販売機のことを考えてしまう。文字そのものは動かない。電球がいつ消えるかを知っているだけで、ちょうどいい速さで歩いている人間の目の中で、行き先がひとこまずつ組み上がる。歩くのが遅すぎれば、ただの雑音だ。歩く速さが合えば、それは一つの文になる。

デザイン業界のメディアはこのゾートロープを「すごい」と呼んでいるし、それは正しい。190年前のアイデアが、木で彫るかわりに印刷された日には、どれも「すごい」ものになる。仕掛けの正体は材料ではなく、そもそも日本的でも西洋的でもなかった——間、隙間、一枚、隙間、一枚という算術であり、提灯や、フリップブックを作ったことのあるどの文化も、それぞれ別々に行き着いた算術だ。後藤はただ、その算術に、ドラムの中を覗き込むだけだった形ではなく、回す前から手に取りたくなる形を与えただけだ。

手の中で回せば、ダンサーは指のあいだの空中で一回転を踊り終え、それをほどき、また踊り終える。手首が動いているかぎり、それが続く。止めれば、彼女はただの支柱に戻る——動きそのものが続いているときにしか読むことに同意しない議論であり、手を止めた瞬間、また梱包材の顔に戻る。

今週のワイヤーから

  1. Akinori Goto's Incredible 3D-Printed Zoetrope Core77

荒川蓮は足立区の荒川沿いで育ち、銀座のデザイン事務所で5年間ロゴを引いたのち、字を詰めるより字について書くほうが面白いと気づいた。駅の看板、米袋、レシート——東京を一枚の組版として読む。神田の印刷所の二階でHakkenを編集している。